練習方法

ディープリスニングまたはペア共感〔西東万里〕

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共感の練習の方法から、指導を受けなくてもすぐにできそうなものを紹介していくシリーズ(不定期)。

同じ名称でいろんな方法があるので、ここでは「基礎づくり」の西東万里が受け継ぎ、経験をもとにブラッシュアップした方法をご紹介します。

 

まずは共感トランプ、または感情とニーズの表あるいはニーズカードをお手元にご用意ください。

「もう(共感ワードの語彙をたくさん)知ってるから/慣れてるから」という方も、まあまあ、ここはひとつ初心に返っていただいて……ヽ(´ー`)

何人で? だれと?

ペア(二人組)でやります。

相手はNVCを知っていても知らなくてもOK。

カップル、親子などのごく親しい間柄とでも、実行可能性が高いのがこのワークのいいところ。

「話を聞く練習をしたいんだけど、つきあって?」などと頼んでみてください。

組織などでチームの関係性を深めたい・育みたいというときにも役に立つでしょう。小学校などでもやれる可能性があると思います。

どうやる?

  1. 話す時間を決める

    最低5分(ちょっと長いかな?とおもうくらい)とれるといいでしょう。
    ふだんからおしゃべり好きなら、10分ぐらいとってみるのもいいでしょう。
    おたがいの好みで、いろんな長さを試してみてもいいかもしれません。

  2. 話す順番を決める

    話したいほう、余裕(リソース)がなさそうなほうから話すといいでしょう。
    先に聞いてもらっておくと、人の話を聞く余裕(スペース)ができるからです。

  3. 話す

    話し手は、制限時間がくるまで話してください。
    オチのない話、事情がよくわからない話、辻褄のあわない話でOKです。
    オタク話や好きなアイドルや極私的な趣味の話などなど、話したくてもふだんは相手を慮って話さないことを、ここぞとばかりに話すのもOKです。
    とくに話題がないなら、そのとき思いついたことでも、気になるニュースや今読んでいる本のことでも、とりとめのない話でも、黙っていても、泣きつづけていても、OKです。

    どうしても話題がなければ、「ニーズ連想」を取り入れてみてはいかがでしょう。ニーズのことばから直感でひとつ選んで、それについて思いうかぶことや考えを語ってください。

  4. 聴く

    聞き手は、黙って、一切口を挟まず(軽い相槌はOK)ただ聴きつづけます。
    そのあいだ、質問疑問やいろんな思いや考えが去来することでしょうが、それにとらわれると相手から気が逸れるので流して、努めて相手に意識を向けます。
    そのためにも、話の内容・意味を追いかけるのではなく、その人の話しぶり(声の調子、筋肉の動き、身振り手振りなど)に意識を向けることを強くおすすめします。

  5. 話を終える

    制限時間がきたら、話し手は、話題が途中でも話を終わらせます。
    相手の時間を尊重するために、そして話が途中でも「聴いてもらった」とのきもちを持てることをあとで知るために。

  6. 沈黙を味わう

    1分ほど、沈黙を味わってください。
    少し気まずいきもちや落ち着かないきもちになるのであれば、そのきもちはどのあたりで感じるのか、からだの反応に注意を向けてみましょう。

  7. 伝える

    聞き手は、共感トランプや感情とニーズの表を広げて、話を聴いていて自分が満たされたニーズ、話し手から受け取った(話し手が大事にしてるんじゃないかと、聞き手として推測した)ニーズを選び出し、話し手に伝えます。

    直感
    で選んでください。そのためにもここで使う時間は1分、長くても2分以内にします。

    ニーズのことばだけを伝えることを、強くおすすめします。
    「私は○○(のニーズ)が満たされました」
    「あなたに、○○(のニーズ)があるように感じました」
    のように。
    がんばって、くだけた(日常的な)表現をつかう必要はありません。それでも伝わるなにかを体験してください。

    話し手は、聞き手のことばを、ただ受け取ります。

  8. ニーズを味わう

    黙って味わう時間を1分ほどとります。

    話し手は、聞き手がくれたことばに「納得がいかない」かもしれません。
    「そんなふうに聞こえたんだ……そんなつもりはないのに」とおもうこともあるかもしれません。
    でも、それも「事実」として受けとめます。

    そして、そのことばを、ただ味わいます。

    「へえ〜、わたしからこんなこと(ニーズのことば)が見えたんだぁ……( ゚д゚)」
    と、まるで初めてこのことばを見るかのように、そのことばを「ながめて」みてください。

  9. シェア

    お互いが感じたり気づいたことを伝えあう時間を1〜3分ほどとります。
    話す前と後、そして味わう時間を経て、自分のなかでどんな変化があったかをことばにします。

    聞き手が分析を披露したりアドバイスをしたいときは、話し手にそれを聞く気があるかどうかを訊いてみてからにしましょう。話し手はつい「いいよ」と言いたくなるかもしれませんが、本当にいいかどうか、自分の胸に手を当てて訊いてから、答えるようにしましょう。
    この時間をもっとしずかに味わいたいかもしれませんから。

  10. 交代

    お互いにお礼を伝えあい、役割を交代します。
    時間があまりないときは、話す時間を短くして、できるだけふたりともが話し、聴くようにしてください。

ポイント——味わうということ

これはNVC練習のひとつ「ディープリスニング」といわれる方法の、西東バージョンです。

最大のポイントは「味わう」時間を入れていることでしょうか。

「味わうってどうやるの?」という方もいると思います。とくに決まった方法はありません。

食べ物を味わうように、もぐもぐごっくん、と消化器官を下へと伝っていく感覚かもしれませんし、自分のからだや近くにある物に触れることで感じられるかもしれません。何度もその言葉をくりかえしつぶやくことで、またその言葉を紙に書いてためつすがめつしたり、その紙をくちゃくちゃともみしだくことで感じられるかもしれません。

「わたし」はどうやったら「味わう」と感じるのかを、探求してください。

その感覚の探求は、共感的コミュニケーションを自分のものにする重要なプロセスになるはずです。

(文責・西東万里)

謝辞

私(西東)は栗山のぞみさんとともに、基礎づくりというコースを数年来やっており、特に最近は「からだづくり」に重点を置いています。マーシャル・ローゼンバーグ言うところの「4 steppers」になってしまうのは身体性が伴わないため、という見解からです。

これには継続的なトレーニングが必要で、そのためにも同期で共感バディを組んだり、共感サークルの実践を強くお勧めしています。

修了後、さっそく自主的にサークルをつくり、あつまることを決めた修了生の方に、バディとはどんなことをやればいいのかと訊かれ、口頭で話すだけでなく詳しく書き残すことで、継続的なトレーニングをサポートしようと思い立ち、この記事を書きました。背中を押してくれたM.K.さんに感謝します。

そしてまた、これらのワークを伝えてくれたトレーナーたちに最大の感謝を。

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